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毎回のごとく、ヤンデレのユーリです。
ちなみに、ここでは嫉妬心はんぱないユーリ、じゃっかん乱暴をするユーリをヤンデレと呼んでます。
ヤンデレに関して解釈が違う方、そんなユーリは無理と言う方はブラウザバックをお願いします。
「つづきはこちら」から小説になります。
TOW2設定です。
シャキン、シャキン‐…
心地いいテンポでなるその音に、ルークは耳を澄ませた。
けれどやっぱり少し落ち着かない。
「ティア…、やっぱり恥ずかしい…。」
「いいから動かないで。」
言ってみても、クールな性格の彼女に冷たくあしらわれて終わった。
「でもさ…。」
「ルーク。」
それでもまだ抵抗してくるルークに、ティアは諭すように名前を呼んだ。
「う~~~……。わかったよ……。」
その声音に、現状を回避することは不可能だと判断したルークは、若干唇を尖らせながら、しぶしぶ了承した。
「ルーク、頭を動かさないで。」
拗ねて下を向いたルークを気にもせず、ティアは淡々と告げる。
そうなると、意識している自分だけがバカみたいだと、ルークは言われたとおり頭を持ち上げた。
再びシャキン、シャキンと心地いい音が響いた。
「髪をボサボサに伸ばしておく親善大使なんて、誰にも信頼してもらえないわよ?どうして整えるのに抵抗するのかしら。それとも髪、伸ばしたかったの?」
漸く落ち着いたルークに、呆れたようなティアの声がかけられる。
ルークだって別に抵抗したいわけじゃない。
ただ、ティアに切られるのが恥ずかしいのだ。
家族のように大事に思っているティアに髪を整えてもらうこと自体は気恥ずかしいけれど嬉しい。
でも、この光景を他の仲間に見られることが恥ずかしいのだ。
(グランマニエのみんなにならまだしも、スパーダとかそこらへんに見られでもしたら、絶対にからかわれるっ!)
とにかく、今この部屋に誰も入ってこないでくれとルークは切実に願っていた。
「おいルーク。」
そんなルークの願いもむなしく、部屋の戸がその声の主によって開かれた。
動かないでって言ってるじゃない、と言うティアの声も無視して、ルークは急いで振り返る。
どうにか自分のことをからかう相手じゃないようにと祈ってみたその先には、黒髪の青年がいた。
「何してんだ?ルーク。」
笑顔でそう尋ねてくるユーリに、ルークの顔から血の気が引いた。
「ゆ…り……。今日は仕事だって……。」
朝そう言って出かけて行った恋人を思い出す。
まだ、お昼前だ。
あの仕事量だったら、戻ってくるにはだいぶ早かった。
「そんなの、お前に会いたいからさっさと終わらせたに決まってんだろ。」
笑顔で言いながら近づいてくるユーリに、ルークの顔は青ざめる。
それとは対照的に、ティアが少し恥ずかしそうに頬を染めていた。
「で、俺は仕事を頑張ってきたのに……。」
ユーリがその大きな手で、ルークの頭をつかんだ。
ティアには気づかれないようにギリギリと手に力を籠められて、頭への痛みにルークはきつく目を閉じる。
「これはどういうことだ?ルーク。」
訪ねてくる目は笑っていない。
「ユーリ、ルークは遊んでいたわけじゃないのよ。私がルークに髪を切らせてって言っただけで……。」
(ティア、違うよ。ユーリが言ってるのは俺が仕事をしてないことじゃないんだ…。)
そんな論点を勘違いしたティアが、ルークのことをかばうようにそう言った。自分のせいで、この仲のいい二人に不協和音が響くことが嫌だったのかもしれない。
けれどそのティアの言葉が事態を悪化させた。
「へぇ、ティアから言ったのか?」
今までルークしか視界に入れていなかったユーリが、ぐるりとティアの方へ顔を向けて、薄ら笑いを浮かべながらそう言った。
その光景にティアはビクッと肩を震わせると、若干の恐怖を感じたのか、顔をひきつらせて一歩後ろへと後退した。
「ユーリ、違う!ティアは今俺をかばおうとしただけで、本当は俺から髪を切ってくれってお願いしたんだ。」
とっさについた嘘だったが、ルークは矛先はティアより自分の方がましだと思った。
たぶん、自分なら……“お仕置き”はされても命をとられることはないはずだから。
「へぇ……。」
一瞬思案して、ユーリはひとまずティアからはさみを取り上げた。
「後は俺がやる。」
それだけ告げて、ユーリはティアに背を向けた。もう話すことは無いと言いたいらしい。
突然にはさみを奪い取られたティアは、ユーリの態度に不信感を覚えて、ルークを心配そうなまなざしで見つめた。
それに気づいたルークは、大丈夫だからと目でティアに伝えた。
早く部屋から出て行った方が、ティアのためでもある。
そんな二人のやり取りに気付いて、ユーリがティアの方を向いてにやりと笑った。
その手に持っているはさみが、ルークの首筋に向けられているのだ。
ルークの注意はティアに向いていて、本人はまったく気づいていない。
つまり、ユーリは自分にだけ警告しているのだと悟った。これ以上ここにいると、ルークを傷つけると。
ティアが自分に切っ先を向けられるよりも、ルークに矛先が向けられた方が言うことを聞くと理解している動きだった。
「……解ったわ、後はお願いね。」
一度目を伏せて、それでもユーリにルークに何かをしたら許さないという意を込めて、負けじとキツイ視線を送ってからティアは退室した。
閉じられた扉から、カツカツと響くヒールの音が、だんだんと遠くなっていくのが解る。
ガシャン!!!
そのヒールの音が耳に届かなくなると、ユーリは勢いよくはさみを投げ捨てた。
金属音が耳に刺さるように鳴り響く。
ルークはビクッと身を縮こまらせ、それからしばらくの沈黙を経てから、ゆっくりとユーリに視線を向けた。
そのユーリからは、揺らぐことのない射る様なまなざしが向けられていた。
「お前、自分が何したかわかってるのか?」
座っているルークはうまい抵抗もできず、目の前に立つユーリに髪を握られ、無理やり上を向かされた。
「いっ……。」
「なんでこの部屋にあいつと二人きりでいるんだ、お前と話をしてるんだ、お前の髪を触らせてるんだ、お前の髪を切らせてるんだ!!」
まくしたてるように言うユーリに、ルークはただ髪を整えてもらっていただけだよ、と諭すように伝えた。
何も他意があったわけじゃない。
「ふざけんな!!」
けれどその答えはユーリの意にはそぐわなかった。
「お前はその髪の毛の一本一本まで俺のものなんだよ!それを勝手に他人に切らせてんじゃねぇよ!!」
怒鳴り散らした後、少しの間荒い息遣いを整える。
息と一緒に気持ちも多少落ち着いたのか、ユーリはルークの目の前に、ゆっくりとしゃがみこんだ。
そして下に散らばる髪の毛を一つまみとると、その手を上にあげ、ルークの目の前に持っていき、そのまま髪を摘まんでいた指を離した。
放り出された髪の毛が、ルークの前をひらひらと舞った。
「あの女、消しちまうか。」
さも楽しそうに言うユーリに、ルークは大きく首を振った。
「ユーリ!ごめん、俺が悪いんだ!!だからそれだけはやめてくれ、お願いだ!」
必死に言うルークに、ユーリは今度は真逆の冷めた目線を向けた。
「あの女をかばうのか?俺よりあの女がいいのか?ルーク。」
「ユーリ、信じてくれ……。俺はユーリが一番好きだよ。ユーリは、特別だよ。」
真剣なまなざしでユーリを見つめる。
「………。」
お互いを見据えたまま、少しの間緊張の時間が続いた。
ユーリはスッと立ち上がり、はさみを拾うと、何も言わずにルークの髪を整え始めた。
ルークはそれにようやく安心し、張りつめていた息を、ゆっくりと口から吐き出す。
「次に見つけたら、ただじゃおかないからな。」
「……わかった…。」
「いいか、お前は髪の毛の先から足の先まで俺のもんなんだ。」
そう告げるユーリの声音は、間違いなく本気だった。
「……わかってるよ、ユーリ。」
部屋には、シャキン、シャキンというテンポのいいリズムが響いてた。
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盲目的なユーリ。
怖くても、でもユーリが好きなルーク。
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